2冊の本で、記憶を繋ぐ

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2冊の手づくりの本で、どこまで記憶は繋がるだろう?

「掌から掌へと、記憶を繋ぎたい」という小さな想いからはじめた「掌の記憶」。

目の前にある記憶を写真におさめて縦に連ねた「掌」と、語られる記憶のことばを添えて横に連ねた「記憶」。その小さな本を箱におさめ、この半年弱で11篇の記憶をお贈りすることができました。

「記憶」というものは人の生そのもので、膨大でいて、人の命と同じくとても儚く、すべてを本に綴じることは到底叶いません。それでもその記憶に触れながらともに過ごした時間と心の動きを綴じることで、持ち主の中に眠る記憶の呼び水になることがあります。

手渡した相手と共有するきっかけにもなることもあり、人と人が繋がり、記憶が未来へと続いていく。

最初は頭の中で描いていただけのイメージでしたが、お孫さんと一緒に富山のおばあさまのお家に泊まりに行ったり、瀬戸内海の島の港町に滞在して町の記憶を綴じたり、ギャラリーのオーナーさんと作家さんの窯元へ伺ったり。誰かと一緒に旅に出て記憶を共有しながら、旅から帰り綴じてお贈りすることを繰り返し。11篇の「掌の記憶」をお贈りする中で、小さな広がりも感じています。

離れて暮らすご家族の分もお贈りしたり、贈りたい人がいると増刷のご依頼を承ったり。ゆかりのある場所に置いていただいたり。数えると41冊の本を綴じていて、正確には2冊以上の「掌の記憶」ですが。お孫さんからおばあさまへ、お母さまから娘さんへ。町の人やふいに出会った人。手渡すことができる出会いの中で、掌から掌へと記憶が繋がり、本というものが持つ力を感じています。

専用の布袋を作って持ち歩いてくださったり、色んな方が読んでいる姿を撮って写真を送ってくださったり、たった1冊の本を大切にしてくださっています。これからも緩やかな出会いの中で続けていきたいなと改めて感じています。

たった2冊の手づくりの本で、掌から掌へと、記憶を繋ぎたい。この初心を忘れず、これからも綴じ続けます。

※2016年8月で19篇の記憶が生まれました。

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