「掌の記憶」とは?
「掌(てのひら)の記憶」は制作コンセプトに共感くださる方と一緒に大切な記憶を振り返り、本に綴じて記憶をつないでいく制作活動です。撮影から製本まで、すべてmichi-siruveひとりの手でおこなっています。
依頼主が暮らす町を訪ね、“大切な記憶”を写真とことばの2冊組の豆本を小箱におさめ、依頼主と綴じ手で持ちあい、記憶をつなぐ。お贈りする本は、写真が70枚弱と文章が2000字ちょっとくらい。和紙で綴じた小さな御守りのようなふわふわの豆本です。
記憶に触れていただける場としてWebでも一部ご紹介していますが、Webへの掲載などはご協力いただける方のみ、無理なくご協力いただける範囲でお願いしています。
「掌の記憶」をはじめた理由
今から5年前。流産をともなうがんを経験し、治療後最初にしたことは、わたしの入院中に別の病院で他界した祖母の遺品を手製本に綴じることでした。
祖母は洋裁家だったこともあり、遺品としてのこっていた大量のデッドストックのレトロボタンや端切れを、制作した手製本と一緒にギャラリーで展示しました。
その展示を境に「わたしの家族の記憶も綴じて欲しい」とご依頼をいただくことが重なりました。承るのであれば、本をつくる過程……つまりはみなさんの人生を振り返る過程や、その過程で見つけた「大切な記憶」を少しだけ社会にひらいて、まだ誰かの心のなかにある記憶の呼び水にしてゆけたら……そんな想いではじめたものです。
そのような想いから、制作費はいただいていません。綴じた本は1組をプレゼントして、もう1組はわたしの手元にいただいて「記憶のアトリエ」などで展示させていただきながら。本づくりをとおして記憶を共有してゆく試みとして、小さく続けています。
プロジェクトといっても、半分以上は自分が生きてゆくためにはじめたようなものです。
忘れられないものや、忘れたくないもの。「記憶」ということばのぬくもりを借りて、抱きながら生きてゆくことはできないかなと。
この4年間で、故郷を離れて暮らすお孫さんからのご依頼で、故郷で暮らすおばあさまの記憶を綴じたり。お母さんからのご依頼で、息子さんが生まれてから23年間の記憶を綴じたり……今制作中の記憶はお孫さんからのご依頼で、おばあさまが生まれ育った町の記憶を辿りながら綴じています。
取材のすすめかたも、本に綴じる記憶の内容も、ご依頼主さまと相談しながら。1箱をお贈りし、もう一箱はmichi-siruveの手元で「手渡しの関係で記憶をつなぐ」試みとして、展示などさせていただきます。ご協力いただける方のみですが、Webサイトにも本の中のお写真や文章の一部を掲載させていただき、本を手渡すことができない方々にもお伝えしています。
ゆるゆる続けておりますので、本に綴じてのこしたい「大切な記憶」があれば、いつでもご相談ください。
(連載「まなざしを綴じる」/日本看護協会出版会より)
※わたし一人で取材に伺うというスタイルのため、現在は一度は対面でお会いしたことがある方、もしくは共通の知人友人がいる方、michi-siruveの展示等にお越しくださった方からのご依頼に限らせていただいていますが、何か急ぎのご相談などございましたらお問い合わせフォームからご連絡ください。
※取材や制作にかかる費用はいただいておりませんが、増刷ご希望の場合のみ、材料費として1冊500円+送料をいただいています。詳しくは上記の「制作の流れ」をご覧ください。
※以下、「掌の記憶」の案内リーフレットに添えていることばと写真を掲載します。
「掌の記憶」は、和紙でできた小さな手づくりの本です。写真を連ねた「掌」と、ことばを連ねた「記憶」の2冊の豆本が掌におさまる小箱におさまっています。
本に綴じるのは、“大切な記憶”。あなたの町へ伺い、記憶の宿るものや景色を写真におさめ、そこに宿る記憶をことばに、綴じてお贈りします。
蛇腹になった不思議な本ですが、本のように頁をめくってご覧ください。掌から思い出話の華が咲くような大切な1冊になると嬉しいです。
本を手渡すことができない方々にもご覧いただけるように、Webサイトにも写真と文章を少し載せています。
綴じた本は1組を依頼主へお贈りし、もう1組は綴じ手の手元で持ち、出会った人に手渡したり展示をしたり「記憶をつなぐ」きっかけづくりに活用させていただきます。何かご相談などございましたら、いつでもご連絡ください。
>>制作の流れ (連載「まなざしを綴じる」/日本看護協会出版会より)
ZINE作家 藤田理代(michi-siruve)