2022年11月1日(火)~11月13日(日)まで、大阪の江之子島文化芸術創造センター(enoco)で企画展「ホスピタルアートinギャラリーIV」が開催されます。
HITO-IROプロジェクトの川西真寿実さんの企画により「医療へのアートの可能性」をテーマに2018年からさまざまなアーティストのみなさんと企画展の開催、医療・福祉の場での協働を重ねていらっしゃる本企画。
昨夜の「おとなの病室」の設営では、ギャラリーのホワイトキューブに置かれた一台のベッドを中心に、出展アーティストのみなさんの作品を響きあわせながらみなさんでひとつの空間を創られていました。
michi-siruve からは、川西さんからのリクエストで『汀の虹』の詩と『掌の記憶』の豆本、「記憶のアトリエ」のトランクをお預けしています。
空間に作用するような作品ではありませんが、「記憶」ということばのもとに依頼主お一人おひとりと掬い上げてきた記憶の欠片は、病室に集うみなさん…患者・家族・医療者の心のなかにある景色と考えることもできるのかもしれません。
今回の展示では上記の作品群に加えてもう一つ、最終日のトークセッションでご一緒する緩和ケア医の儀賀理暁さんと「療養中に使用していたウォークマン」という題の作品を制作・展示しています。
2022年の春から秋にかけて、michi-siruveの活動を通じて儀賀さんとラジオや大学の講義で時間をともにする機会をいただきました。その時間のなかで、患者の“いえないいたみ”を綴った豆本詩集『汀の虹』の詩を読んでくださり、2つの音楽作品をお贈りくださいました。
『汀の虹』を展示するのであれば、制作から5年を経てわたしのもとにやってきたこの音楽たちも一緒に触れていただくことはできないだろうか。儀賀さんや川西さんにもご相談して、今回の展示でも置かせていただけることになりました。音楽作品は、わたしががんの治療中からずっと肌身離さず使用していたウォークマンにおさめて置いています。
制作過程などの詳細は11月13日のトークセッションにて。他者の深いところをきくということ、またそれぞれの表現で交わすというひとつのかたちを感じていただけたらと思います。
最後に、今回の企画展を通じてこの空間に集うみなさんと考えてゆきたいこととして、作品説明のはじめに綴った文章を添えて企画展のご案内とさせていただきます。
ともに創りあげる、という想いのもとで生まれた静かな響きあいに満ちた空間でお待ちしています。
※時節柄常時在廊は控えますが、下記時間帯は会場にいる予定です。その他の時間帯も、土日祝であればご連絡いただけましたら在廊もできますのでお知らせください。
11月 5日(土)午後~16:30頃まで
11月12日(土)13:00~夕方まで
11月13日(日)13:00~16:00まで
「ホスピタルアート in ギャラリー」によせて
病をはじめとした、喪失がもたらす“いえない(言えない・癒えない)いたみ”。
言葉にして表現することが困難なほどの、また、いつまでも癒えずに心のなかにあり続けるいたみを抱えたとき、そのいたみのなかでどのように今日を生きたらよいのだろう。
そして、病室という孤独のなかで、さまざまな“いえないいたみ”を抱えているかもしれない患者さんやご家族の心の声をきき、一人ひとりのこれまでと今日をみつめ、これからをともに考えるにはどのような環境や関わりがあったらよいのだろう。
10代から患者家族として、20代では自らも流産からのがん治療という“いえないいたみ”を経験した一人として、そのような問いを見つめながら生きてきました。
今回展示いただいている3つの作品群は、“記憶”ということばのもと、自らが、そして患者さんやご家族、医療者のみなさんと積み重ねてきた制作や協働の足跡です。
そして、その拠り所となっているのは、大学で学んだソーシャルワークのまなざしと、卒業後15年間携わっている本や広告、Webメディアのコンテンツ制作の術です。
なかなか上手くお伝えできませんが、大学時代の恩師に教わり、他者との関わりのなかでいつも大切にしていることばを借りて、作品紹介への導入とさせていただきます。
・多様性の尊重
・当事者から話を聞く、彼(女)らから学ぶ
・彼(女)らからの情報、彼(女)らの現実
・彼(女)らが自分たちの夢を達成する、われわれはそれを促進(横から支援)するだけ
・誰も彼(女)らに教えることはできない(ただ学ぶことの手助けをするだけ)
・誰も彼(女)をエンパワーすることはできない(ただそれを促すだけ)
・誰も彼(女)らを変えることはできない(ただそれを支援するだけ)
Participatory Learning and Action (PLA)、Participatory Rural Appraisal (PRA)の特徴 より
2022年11月1日 藤田理代(michi-siruve)
ホスピタルアートinギャラリーIV
日時
2022年11月1日(火)〜13日(日)11:00〜19:30
(11/6 月曜休館 最終日16:00迄)
会場
大阪府立文化芸術創造センターenoco
大阪市西区江之子島2ー1ー34 *大阪市芸術活動振興助成事業
参加アーティスト
五影華子 いまふくふみよ 葛本康彰 古巻和芳 鷲津民子 michi-siruve 山本修司 川西純市
ヒガシテッペイ(RBTXCO) 冬耳 jobin. e.shi.to Wools 北東紗輝 mi-sha いしいまゆみ 古屋ともよ
会場トークセッション
「医療者がアートに求めるものと可能性」
11/12(土)15:00〜16:30 無料 定員20名 予約優先
岡崎 伸 大阪市立総合医療センター小児神経内科 小児言語科部長/スペシャルキッズひろば代表
川西真寿実 ホスピタルアート ディレクター HITO- IROプロジェク代表
「ホスピタルアートを考えるその前に」
11/13(日)13:00〜14:30 無料 定員20名 予約優先
藤田 理代 希少がん経験者/ ZINE作家 (michi-siruve)
儀賀 理暁 埼玉医科大学総合医療センター緩和医療科・呼吸器外科教授